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【 第一章 】 明かされる真実 3

《 三車火宅の譬え 》

○ 舎利弗 若国邑聚落 有大長者 其年衰邁 財富無量 多有田宅及諸僮僕
○ 其家広大 唯有一門 堂閣朽故 梁棟傾危 周帀倶時 欻然火起 焚焼舎宅
○ 長者諸子 在此宅中

○ 舎利弗よ 国邑聚落に 大長者有るが若し
○ 其の年は衰邁して 財富無量にして 多くの田宅及び諸の僮僕有り
○ 其の家は広大にして 唯だ一門有り 堂閣は朽ち故り 梁棟は傾き危うし
○ 周帀して倶時に 欻然に火は起こって 舎宅を焚焼す
○ 長者の諸子 此の宅の中に在り


舎利弗よ。 国 ・ 村 ・ 聚落に大長者がいるとしよう。
年をとって衰えているが、財産や富は量り知れないほど多く、多くの田や屋敷、および、多くの使用人を持っている。
その屋敷は広大であるが、門はただ一つだけしかない。( 中略 )
その立派な建物は朽ちふるび、梁も棟も傾いて危険な状態である。
そんな時、周囲から同時に火が起こって、屋敷を焼かれてしまう。
長者の子供たちは、( 中略 ) この屋敷の中にいる。


○ 長者見是大火従四面起 即大驚怖 而作是念
○ 我雖能於此所焼之門 安穏得出 而諸子等於火宅内 楽著嬉戯 不覚不知 不驚不怖
○ 火来逼身 苦痛切己 心不厭患 無求出意

○ 長者は是の大火の四面従り起こるを見て 即ち大いに驚怖して 是の念を作さく
○ 我れは能く此の焼くる所の門於り 安穏に出ずることを得たりと雖も
○ 諸子等は火宅の内に於いて 嬉戯に楽著して 覚えず知らず 驚かず怖じず
○ 火来って身を逼め 苦痛己に切まれども 心に厭患せず 出でんと求むる意無しと


長者はこの大火が四方から起こるのを見て大いに驚き怖れ、この思いを持った。
「 私はこの焼かれている門から安全に出ることができたといっても、子供たちは焼かれている屋敷の中で楽しい遊びに執着していて、火事のことを覚らず、知らず、驚かず、怖れることをしない。
火が来て身に迫り、苦痛が自分に差し迫ってきているのに、心に苦しむことをいやに思う気持ちがなく、屋敷の外へ出ようと求める意思がない 」 と。


○ 舎利弗 是長者作是思惟 我身手有力 当以衣裓 若以几案 従舎出之
○ 復更思惟 是舎唯有一門 而復狭小 諸子幼稚 未有所識 恋著戯処 或当堕落
○ 為火所焼 我当為説怖畏之事 此舎已焼 宜時疾出 無令為火之所焼害

○ 舎利弗よ 是の長者は是の思惟を作さく
○ 我れは身手に力有り 当に衣裓を以て 若しは几案を以て 従舎り之れを出すべしと
○ 復た更に思惟すらく
○ 是の舎は唯だ一門有りて 而も復た狭小なり 諸子は幼稚にして 未だ識る所有らず
○ 戯処に恋著し 或は当に堕落して火の焼く所と為るべし
○ 我れは当に為めに怖畏の事を説くべし 此の舎は已に焼く
○ 宜しく時に疾く出でて 火の焼害する所と為らしむること無かるべしと


舎利弗よ。 この長者はこの考えを持った。
「 私には身にも腕にも力がある。 まさに花を盛るかごによって、もしくは机によって、屋敷から子供たちを連れ出そうか 」 と。
またさらに考えた。
「 この屋敷は門がただ一つだけあって、しかも狭くて小さい。
子供たちは幼稚であり、まだ何も分からず、遊びに執着している。
あるいはまさに落ち込んで、火で焼かれてしまうにちがいない。
私はまさに子供たちのために、怖ろしさを説いてやろう。
この家はすでに焼かれようとしている。
適切な時にすみやかに外に出て、火で焼かれることがないようにしよう 」 と。


○ 作是念已 如所思惟 具告諸子 汝等速出
○ 父雖憐愍 善言誘喩 而諸子等楽著嬉戯 不肯信受 不驚不畏 了無出心
○ 亦復不知何者是火 何者為舎 云何為失 但東西走戯 視父而已

○ 是の念を作し已って 思惟する所の如く 具に諸子に告ぐらく 汝等速かに出でよと
○ 父は憐愍して善言もて誘喩すと雖も
○ 諸子等は嬉戯に楽著し 肯えて信受せず 驚ず畏れず 了に出ずる心無し
○ 亦復た何者か是れ火 何者か為れ舎 云何なるをか失うと為すを知らず
○ 但だ東西に走り戯れて 父を視るのみ


この思いを持ち終わって、考えたことを、つぶさに子供たちに告げた。
「 汝ら、すみやかに屋敷から出なさい 」 と。
父はかわいそうに思って、善い言葉で喩え誘うけれども、子供たちは楽しい遊びに執着して、あえて父の言葉を信じず受け入れず、驚かず、怖れず、最後まで屋敷の外に出ようとする心がない。
また火事とは何なのか、屋敷とは何なのか、命を失うとはどういうことなのかを知らず、ただ東西に走り戯れて、父を見つめるだけである。


○ 爾時長者即作是念 此舎已為大火所焼 我及諸子若不時出 必為所焚
○ 我今当設方便 令諸子等得免斯害

○ 爾の時 長者は即ち是の念を作さく 此の舎は已に大火の焼く所と為る
○ 我れ及び諸子は 若し時に出でずば 必ず焚くと為らん
○ 我れは今当に方便を設けて 諸子等をして斯の害を免るることを得しむべしと


その時、 長者はすぐにこの思いを持った。
「 この屋敷はすでに大火に焼かれている。
私も子供たちも、もしも適切な時に外に出なければ、必ず焼かれることだろう。
私は今まさに方便を設けて、子供たちがこの害から免れることができるようにしなければならない 」 と。


○ 父知諸子 先心各有所好 種種珍玩奇異之物 情必楽著 而告之言
○ 汝等所可玩好 希有難得 汝若不取 後必憂悔 如此種種羊車 ・ 鹿車 ・ 牛車
○ 今在門外 可以遊戯 汝等於此火宅 宜速出来 随汝所欲 皆当与汝

○ 父は 諸子の先心に各おの好む所有る種種の珍玩奇異の物には
○ 情必ず楽著せんと知って 之れに告げて言わく
○ 汝等が玩好す可き所は 希有にして難得し 汝は若し取らずば 後に必ず憂悔せん
○ 此の如き種種の羊車 ・ 鹿車 ・ 牛車は 今門外に在り 以て遊戯す可し
○ 汝等は此の火宅於り 宜しく速かに出で来るべし 汝が欲する所に随って 皆な当に汝に与うべしと


父は、 前に子供たちがそれぞれ好んでいた、さまざまな珍しい玩具や奇異の物には、感情が必ずそれらに執着すると知って、子供たちに告げる。
「 汝らが玩具として好む物は、希にしかなく、得ることが難しい。
汝はもしも取らなければ、必ず後悔するだろう。
このような好む物である羊車 ・ 鹿車 ・ 牛車は、今門の外にあり、それで遊ぶことができる。
汝らはこの燃えている屋敷からすみやかに出てきなさい。
汝らが欲しい物をそれぞれ与えよう 」 と。


○ 爾時諸子聞父所説珍玩之物 適其願故 心各勇鋭 互相推排 競共馳走 争出火宅
○ 是時長者見諸子等安穏得出 皆於四衢道中 露地而坐 無復障礙 其心泰然
○ 歓喜踊躍 時諸子等各白父言 父 先所許玩好之具 羊車 ・ 鹿車 ・ 牛車 願時賜与

○ 爾の時 諸子は父の説く所の珍玩の物を聞くに 其の願に適えるが故に
○ 心は各おの勇鋭して 互相に推排し 競いて共に馳走し 争いて火宅を出ず
○ 是の時 長者は 諸子等の安穏に出ずることを得て 皆な四衢道の中の露地に於いて坐して
○ 復た障礙無く 其の心は泰然として 歓喜踊躍するを見る
○ 時に諸子等は 各おの父に白して言さく
○ 父よ 先に許す所の玩好の具の羊車 ・ 鹿車 ・ 牛車を 願わくは時に賜与したまえと


その時、 子供たちは父の説く珍しい玩具の物を聞いてその願いに適うがゆえに、心はそれぞれ勇み、お互いに押し開いて競ってともに駆け走り、争って燃えている屋敷から出た。
この時、 長者は子供たちを安全に外に出すことができて、皆が四方に通じる道の中の露地に坐って、また何の障害も無いのを見て、その心は落ち着いて動じず、歓喜して心が躍るのが分かった。
そこで子供たちはそれぞれ父に言った。
「 父よ、 先ほど約束した玩具である羊車 ・ 鹿車 ・ 牛車を、願わくは今与えてください 」 と。


○ 舎利弗 爾時長者各賜諸子等一大車 而作是念
○ 我財物無極 不応以下劣小車 与諸子等 今此幼童 皆是吾子 愛無偏党
○ 我有如是七宝大車 其数無量 応当等心各各与之 不宜差別

○ 舎利弗よ 爾の時 長者は各おの諸子に等一の大車を賜う 而も是の念を作さく
○ 我が財物は極まり無し 応に下劣の小車を以て諸子等に与うべからず
○ 今 此の幼童は 皆な是れ吾が子なり 愛するに偏党無し
○ 我れに是の如き七宝の大車有って 其の数は無量なり
○ 当に等心にして各各に之れを与うべし
○ 宜しく差別すべからず


舎利弗よ。 その時、長者はそれそれの子供たちに、第一級の大きな車を与えた。 ( 中略 )
しかもこの思いを持った。
「 私の財産には限りがない。
劣っている小さな車を子供たちに与えるべきではない。
今、この子供たちは、皆な私の子である。
愛するのに偏ることはない。
私にはこのような七つの宝で飾った大きな車があって、その数は量り知れない。
まさに心を等しくして、それぞれにこれを与えるべきである。
適当に差別してはいけない 」 と。


○ 是時諸子各乗大車 得未曽有 非本所望

○ 是の時 諸子の各おの大車に乗って 未曽有なることを得るは 本の望む所に非ず


この時、子供たちはそれぞれ大きな車に乗ってみて、いまだかつてなかった物を獲得するが、それはもともと望んでいた物ではなかった。

子供たちは想像すらできなかった素晴らしい物を、獲得することができたのです。

釈尊は、四十二年間の自分の振る舞いを、この譬えと比較します。

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